先月に続いて、朝日新聞4月9日版に「自治会活動 曲がり角」という2ページにまたがる特集記事が出ていました。今年の地方統一選挙での9知事選よりも大きなテーマとして扱っていましたので、その内容を以下にご紹介します。
記事を読むと、総務省の調査として自治会の世帯加入率が2010年の78.0%から20年度の71.7%に低下したという。ただこの数字だけではあまり切迫感を感じない。数字の1桁内での変化で、「8割近い78%からわずか6%低下しただけであり、28%から6%低下したわけではないのだから」と見えてしまいます。しかし、この6%の落差は非常に大きいです。具体例として東京都における自治体数の減少に関するデータが示されていました。
東京都の自治会数の増減
下図は、東京都における自治会の減少数を市区毎に集計したものです。
トップが調布市で、2016年から2022年の間に41もの自治会・町内会が解散しています。調布市は、東横線沿線の田園調布のような超高級住宅地ほどではないですが、田園調布の西10kmほどの所にあり、京王線で新宿にも近い武蔵野丘陵にある自然豊かな街です。他にも府中市とかあちこちでも減少しています。地方の田舎で起こっている問題ではなく東京のど真ん中でおこっている問題なのです。もちろん原因の一つには東京近郊での団地の分譲時期の違いで、今まさに団塊の世代が高齢化で引退したことにより起こっていることかもしれません。日限山も我が身として感じざるを得ない状況です。
行政専門家の見方
それでは、行政や地域コンサルタントの専門家はどう考えているのでしょうか。新聞では2面にその状況を「スリム化へ脱自治会の動きも」というタイトルで紹介しています。例えば甲府市の自治会では、自治会を解散して会費や弔慰金は廃止する一方で、防災に注力して自主防災マニュアルを作成した事例を紹介しています。ただ困ったことに防犯灯の電気代は自治会が負担していたとか、従来目に見えてなかったところで自治会の存在意義が再発見された例もあります。さらに賛同会員として「ゆるやかなつながり」を目指す例も紹介されていました。会費や清掃などの義務はないが夏祭り等のイベント協力は自由意志で参加するというものです。
しかし一方では昔と異なり、現在ではNPOなどの多くのボランティア活動も育ってきています。すべてを行政に任せるという考えは通用しなくなっています。いろんな力を結集することが求められるようになっています。
そして行政の方でも問題の深刻化に気付いていて、広報資料をまとめて発行回数を少なくしたり、ホームページに掲載するなどのデジタル化に取り組んでいる例も紹介されています。
自治会とは何か
それでは、そもそも自治会とは何のためにあるのでしょうか。日本では江戸時代からの隣組の考え方による互助の精神が強調されていました。今でいう「共助」の精神です。だから自治会に絶対加入すべきという強制はなく各人の自由意志で入退会できる仕組みになっていますが、現実には住民の殆どが参加し、行政の最末端機構として行政から住民への伝達機関として利用されてきました。
しかし且つて90年代には現役世代として働いていた団塊以上の世代も今では高齢者になり、その孫世代が少子化で「共働き」という現実に直面して喘ぐような時代になると、高齢者は孫世代に任せて見守るしかないのではないでしょうか。かっての伝説として語られた「姥捨て山」の世界です。だから新聞も現状を責めることができない。ただ現実の孫世代が社会をどうしようと注視しているだけであり、孫世代自身がどうしたいと発言することを待っているように見えます。時代が変わりつつあります。私たちの目の前で「自治会」は変化しつつあります。