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ボランティアを考える

自治会はご承知のように多くのボランティアで成り立っている。しかし「ボランティア」というのは本来どのように定義されているのだろうか。一般的には「自発的な意志に基づき他人や 社会に貢献する行為」を指してボランティア活動と言われており、日本で多くの人に知られるようになったのは、「ボランティア元年」といわれる1995年の阪神・淡路大震災であろう。若者を中心に延べ約137万人の人たちが災害復旧に携わった。「自分の意志」で動くという「ボランティア」の元々の意味が多くの人に認識されるようになり、その後の東日本大震災など多くの災害で定着するようになった。

このようにして「ボランティア」という言葉が定着すると、一方では、ボランティア=無償の社会貢献活動という側面が顕著になる状況が生じてきたこともあるのではないだろうか。
良い例が自治会活動である。自治会は行政の最下層として住民と行政の接点での社会貢献活動をしてきた。地域の一斉清掃やゴミ箱等の環境保全を行ったり、防災のための避難訓練を行ったりと多岐にわたる活動をしている。そういう意味では完全なボランティア活動であり、無償の社会貢献活動である。ただ大変なのは役員である。活動の推進役としてそれなりの責任と実行力を求められるので、積極的に引き受けてくれる人は少なく、例年回り持ちで担当する場合が多い。まさに本来ボランティアであるべき自治会活動に、その「自発性」を損ねる要因が出て来ているのが、現在の自治会活動の重大な課題である。

一方、「ボランティア」という言葉に着目して、政府も社会福祉事業の推進をおこなってきた。バブル崩壊後の予算確保に奔走していた政府は地域の「社会福祉」に目を付け、社会福祉協議会等の整備を行い、無償で社会貢献活動を行う団体をNPO(特定非営利活動法人)として規定するなどの法律整備を行うとともに、これらの団体の社会福祉活動を支援してきた。

ただこのようにして社会福祉の事業分野が拡大してくると、単なる無償の善意の社会貢献活動だけでは済まなくなり、有償の社会貢献活動も必要になってきた。さらに有償で社会福祉活動に従事していただくだけでなく、介護等の福祉活動に従事することで、自分が介護される側なってしまった場合に自分の介護を委託することができるようにすることも進んでいる。福祉という分野では、単なる無償の奉仕活動から、有償の奉仕活動が追加され、さらに色々な見返りを提供できる各種の有償の奉仕活動へと発展してきている。

このように見てくると、「ボランティア」という言葉は、社会の進展、少子高齢化が進む中で、ますます複雑になり、より重要なものになりつつあることが理解できる。
そういう状況の中で、さらにボランティア活動を進めていくうえで考えるべき重要な課題としては次の2点があるように感じる。
一つは、ボランティア活動の徹底的な業務改善である。ボランティア活動は基本的に無償の活動であるから、その活動効率が悪く参加者に無駄を感じさせるようでは、参加者の参加意欲を減退させてしまう。中には「社会貢献は往々にして多くの苦労が伴うことが多いが、その苦労を克服した時の達成感はより大きい」と考える人もいるが、その労苦を感じさせないようにすることの方がより重要ではないだろうか。ITなどを活用してできるだけ無駄を省き、快適に参加できるようにすることが肝要である。
そしてもう一つはボランティア活動の基本である「自発性の確保」である。近年の「働き方改革」で共稼ぎが当たり前になり、個人の生活時間に余裕を持たせ、自発性を期待することが難しくなっている。自発性がなくなり参加者に負担を感じさせるようではボランティア活動とは言えなくなる。
自治会は、あくまでも「自発性」を前提にした社会貢献活動でなければならないと思う。